子どもの歯並びは「生えるスペース」で決まります|乳歯のすき間・口呼吸と歯並びの関係|二宮町の歯科医師が解説
「歯並びが悪いのは、親に似たからでしょうか」
お子さまの歯並びについて、保護者の方からこうしたご質問をいただくことがあります。
確かに、あごの形や歯の大きさには遺伝の影響があります。ただ、歯並びがガタガタになる場合、問題は歯そのものより、歯が並ぶ「場所」にあることが少なくありません。
歯の大きさは、生えてくる前にほぼ決まっていて、あとから変えることはできません。一方で、歯が並ぶスペースは、子どものあいだに育っていきます。そしてその育ち方には、呼吸・食べ方・舌の位置といった毎日の習慣が関わっています。
秋は、来春小学校に入学するお子さまの就学時健康診断の時期でもあります。歯の生えかわりが始まるこの時期に、知っておいていただきたいことをまとめました。
歯並びは「歯の大きさ」と「スペース」のバランス
永久歯は、乳歯よりひとまわり大きい
乳歯は全部で20本、永久歯は親知らずを除いて28本です。前歯は、乳歯から永久歯に生えかわるとひとまわり大きくなります。
大きくなった歯が、限られた場所に並ばなければなりません。スペースが足りないと、歯は重なったり、ねじれたり、列からはみ出したりします。これが「叢生(そうせい)」、いわゆるガタガタの歯並びです。八重歯もそのひとつです。
厚生労働省の歯科疾患実態調査(2016年)では、12〜20歳の約4人に1人(約26%)に叢生がみられました。珍しいことではありません。
| 項目 | 乳歯 | 永久歯 |
|---|---|---|
| 本数 | 20本 | 28本(親知らずを除く) |
| 生える時期 | 生後6か月ごろ〜3歳ごろ | 6歳ごろ〜12歳ごろ |
| 前歯の大きさ | 小さい | ひとまわり大きい |
| 歯と歯の間 | すき間があるのが正常 | すき間なく並ぶ |
変えられるのは「スペース」のほう
歯の大きさは変えられません。でも、歯が並ぶアーチ(歯列)とあごは、成長期のあいだ育ち続けます。だからこそ、子どものうちの習慣に意味があります。
なお、受け口(下あごが前に出ている)のように、骨格そのものに遺伝の影響が大きい歯並びもあります。すべてが習慣で決まるわけではないことも、あわせてお伝えしておきます。
乳歯のすき間は「あってよい」すき間です
3〜5歳ごろのお子さまの歯を見て、「すきっ歯で心配」と感じる保護者の方がいらっしゃいます。
実は、乳歯の前歯にすき間があるのは正常です。このすき間は、あとから生えてくるひとまわり大きな永久歯のための、いわば「予約席」です。
反対に、乳歯がすき間なくぴったり並んでいる場合は、永久歯に生えかわるときにスペースが足りなくなりやすい傾向があります。一見きれいな乳歯の歯並びが、実は注意が必要なこともあるのです。
ただし、すき間があれば必ずきれいに並ぶ、というわけではありません。乳歯のすき間はひとつの目安として見てください。
歯並びのスペースに影響する4つのこと
1. 乳歯の虫歯で、奥歯が前に倒れてくる
「どうせ生えかわるから」と、乳歯の虫歯を後回しにしていませんか。
6歳ごろ、乳歯のいちばん奥のさらに奥に、最初に生えてくる永久歯のひとつ「6歳臼歯」が生えてきます。乳歯の奥歯は、この6歳臼歯が前にずれないように支えながら、あとから生えてくる永久歯の場所を確保しています。
虫歯で乳歯の奥歯が大きく欠けたり、早く抜けたりすると、6歳臼歯が前に倒れ込んで、永久歯の場所をふさいでしまうことがあります。歯には、すき間があると動いてそれを埋めようとする性質があるためです。大人の歯でも同じことが起こります(→歯を1本失うと全部が動き出す理由)。
乳歯を早く失った場合は、スペースを保つための装置(保隙装置)を使うことがあります。乳歯の虫歯を防ぐことは、そのまま永久歯の場所を守ることにつながります。乳歯の虫歯予防の考え方は、スプーンを分けても虫歯は防げませんでお伝えしています。
2. 口呼吸(お口ぽかん)で、舌が下がる
口を閉じて鼻で呼吸しているとき、舌は上あごにぴったりと触れた位置に収まっています。この舌が、上あごを内側から支え、幅を保つ役割をしていると考えられています。
ところが口で呼吸していると、舌は下がり、上あごを内側から支える力が弱まります。外側からは頬の筋肉が押しているため、上あごの幅が狭くなりやすく、歯の並ぶスペースが足りなくなることがあります。
全国の小児歯科を受診した3〜12歳の約3,400人を調べた研究(2021年)では、約3割(30.7%)の子どもに「お口ぽかん」(口唇閉鎖不全)がみられました。年齢とともに割合が増える傾向があり、成長にともなって自然には治りにくい状態と考えられています。
さらに今年(2026年)7月には、ライオン・弘前大学・青森県黒石市の共同研究で、小学3・4年生のときに「寝ているときに口が(よく・時々)開いている」と保護者が答えた子は、2年後にガタガタ(叢生)が始まった割合が、そうでない子よりはっきりと高かった(統計的に意味のある差)ことが報告されました。
これは「関連がある」ことを示したもので、口呼吸だけが原因だと証明されたわけではありません。それでも、毎日の呼吸の仕方と歯並びがつながっている可能性を示す、大切な結果です。
また、口が開いていると口の中が乾き、虫歯や歯ぐきの炎症も起こりやすくなります(→あなたの歯を守っているのは唾液です)。
3. あまり噛まない食べ方
同じ研究では、「食事のときにあまり噛んでいない」と保護者が答えた子も、2年後に叢生が始まった割合が高かったと報告されています。
噛むことは、あごの筋肉や骨の成長への刺激になると考えられています。やわらかいものを飲み物で流し込むような食べ方が続くと、その刺激が少なくなります。
4. 指しゃぶり・舌で前歯を押す癖
指しゃぶりが長く続くと、上の前歯が前に出たり、奥歯で噛んでも前歯が閉じない(開咬)状態になったりすることがあります。指を吸うときの頬の力で、上あごの幅が狭くなることもあります。飲み込むたびに舌で前歯を押す癖(舌癖)も、前歯のすき間の原因になります。
指しゃぶりは、3歳ごろまでは無理にやめさせる必要はないとされています。眠いときや不安なときの安心材料になっていることも多いため、叱ってやめさせるより、手を使う遊びや寝る前の絵本など、ほかの安心できる習慣に少しずつ置き換えていくのがおすすめです。3歳を過ぎても頻繁に続く場合や、小学校入学が近づいても続いている場合は、一度ご相談ください。
「お口ぽかん」セルフチェック
当てはまるものがないか、確認してみてください。
- テレビや動画を見ているとき、気がつくと口が開いている
- 寝ているときに口が開いている、いびきをかく
- 唇が乾きやすい、荒れやすい
- 口を閉じると、あご先に梅干しのようなシワができる
- 食べるときにクチャクチャ音がする
- 食べ物を飲み物で流し込むことが多い
- 鼻がつまりやすい
なかでも寝ているときの口の状態は、保護者の方にしか確認できません。今夜、お子さまの寝顔を一度見てみてください。
今日からできる「スペースを育てる」3つの習慣
1. 鼻で呼吸できる状態を整える
鼻がつまっていては、口を閉じたくても閉じられません。鼻づまりが続く、いびきが大きい場合は、アレルギー性鼻炎や、のどの奥の扁桃(アデノイド・扁桃腺)の大きさが関わっていることがあります。まずは耳鼻咽喉科や小児科でご相談ください。
2. 舌の「定位置」を教える
- 舌の先は、上の前歯のすぐ後ろの歯ぐきより、少し奥に
- 舌全体は、上あごにぴったりとつける
- 唇は閉じて、上下の歯は軽く離す
これは大人も同じです(→上下の歯、今くっついていませんか?)。舌を上あごに吸いつけて「ポン」と鳴らす遊びは、舌を持ち上げる練習として、小さなお子さまでも取り入れやすい方法です。
3. 「噛む回数」を増やす食べ方
- 食べ物を小さく切りすぎない。前歯でかじりとる機会をつくる
- 口の中のものを飲み込んでから、次の一口。飲み物で流し込まない
- 足が床(または台)につく椅子で食べる。体が安定すると、しっかり噛みやすくなります
大切なのは、硬いものを無理に食べさせることではなく、ふだんの食事で噛む回数を増やすことです。
生えかわりの時期、様子を見てよいこと・相談したほうがよいこと
6歳ごろから始まる生えかわりの時期には、見慣れない歯並びに驚くことがあります。
| こんなとき | 考えられることと目安 |
|---|---|
| 下の前歯が、乳歯の内側から生えてきた | よくあることです。乳歯が抜けると、舌に押されて前に出てくることが多いです。乳歯がグラグラしないまま、なかなか抜けない場合はご相談ください |
| 上の前歯の間にすき間がある・ハの字に開いている | 生えかわりの途中で一時的にみられることが多く、犬歯が生えるころに閉じていくことがあります。すき間が大きい場合は、上唇のすじ(上唇小帯)や余分な歯(過剰歯)が関わっていることもあるため、ご相談ください |
| 前歯がガタガタに生えてきた | あごの成長で目立たなくなることもありますが、スペースが大きく足りないこともあります。一度確認しておくと安心です |
| 受け口(下の前歯が上の前歯より前に出ている) | あごの成長に影響することがあるため、早めのご相談をおすすめします |
| 奥歯で噛んでも、前歯が閉じない | 指しゃぶりや舌の癖が関わっていることがあります。ご相談ください |
| 噛むと、あごが左右どちらかにずれる | あごの成長が左右で偏ることがあるため、早めのご相談をおすすめします |
相談のタイミングは「7歳ごろ」がひとつの目安
米国矯正歯科医会(AAO)は、7歳までに一度、歯並びのチェックを受けることをすすめています。7歳ごろは、上下の前歯と6歳臼歯が生えてきて、スペースの過不足や噛み合わせのずれが見えてくる時期だからです。
相談=すぐに治療を始める、ということではありません。多くの場合は、成長を見ながら経過を確認していきます。早めに状態を知っておくことで、生えかわりの見通しが立てやすくなります。
受け口やあごのずれのように早めの対応がすすめられるものは、7歳を待たずに、気づいた時点でご相談ください。就学時健診や学校の歯科健診で、歯並びや噛み合わせについてお知らせを受け取った場合も同様です。
また、お口ぽかんや、噛む・飲み込むといった口の働きの発達に課題がある場合は、「口腔機能発達不全症」として、18歳未満のお子さまは歯科で保険による管理・指導の対象になることがあります。
二宮町・はら歯科クリニックでの取り組み
当院の小児歯科では、保険診療を前提に、治療から予防・定期検診まで行っています。お子さまの検診では、虫歯の有無だけでなく、
- 生えかわりの進み方(乳歯が抜ける順番や時期)
- 永久歯が並ぶスペースの見通し
- 唇の閉じ方や舌の位置など、口呼吸のサイン
- 指しゃぶりなどの癖
もあわせて確認します。矯正治療が必要と考えられる場合は、矯正歯科での詳しい相談をご案内しています。
「この歯並び、様子を見ていいの?」というご相談だけでも構いません。保護者の方の検診とご一緒の受診も歓迎です。二宮町・大磯町・平塚市からもご来院いただいています。
まとめ
- 歯並びのガタガタ(叢生)は、歯の大きさと、歯が並ぶスペースのバランスで起こる
- 歯の大きさは変えられないが、スペースは子どものあいだに育つ
- 乳歯のすき間は正常。永久歯のための「予約席」
- 乳歯の虫歯で奥歯を早く失うと、6歳臼歯が倒れてスペースがなくなることがある
- 3〜12歳の約3割に「お口ぽかん」。寝ているときの口呼吸と、その後の叢生との関連も報告されている
- 鼻呼吸・舌の定位置・よく噛む食べ方が、スペースを育てる習慣
- 相談の目安は7歳ごろ。受け口やあごのずれは気づいた時点で
歯並びは、歯が生えてから考えるものではなく、歯が並ぶスペースが育つあいだに準備されていくものです。今夜はまず、お子さまの寝顔をのぞいてみてください。
関連ページ
- 小児歯科 — 当院の小児歯科のご案内
- スプーンを分けても虫歯は防げません — 乳歯を虫歯から守る、今の考え方
- 上下の歯、今くっついていませんか? — 舌と歯の「正しい位置」
- 歯を1本失うと全部が動き出す理由 — すき間に向かって歯が動く仕組み
はら歯科クリニック(神奈川県中郡二宮町・二宮駅から徒歩2分)
予防歯科・義歯治療・ホワイトニング
診療時間:火〜金 9:00〜13:00/14:00〜17:00(最終受付16:30)、土 9:00〜15:00(最終受付14:30)※11月7日(土)からは 9:00〜14:00(最終受付13:30)
休診日:日・月・祝
ご注意(禁忌・留意事項)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
※歯並びやあごの成長には個人差があり、遺伝の影響もあります。生活習慣を見直しても、歯並びの乱れを防げない場合があります。
※本記事で紹介した研究は、口呼吸やあまり噛まない習慣と歯並びとの関連を示したものであり、それらが直接の原因であることを証明したものではありません。
※鼻づまりや大きないびき、寝ているときに呼吸が止まる様子がある場合は、口を閉じるためのテープなどを自己判断で使わず、耳鼻咽喉科・小児科を受診してください。
※食べ物は、年齢に合った大きさ・かたさで与えてください。硬い豆やナッツ類は、窒息・誤嚥のおそれがあるため5歳以下の子どもには食べさせないよう、消費者庁が注意を呼びかけています。
※指しゃぶりの背景に、不安や緊張などの心理的な要因がある場合もあります。無理にやめさせず、気になる場合は小児科・小児歯科にご相談ください。
※矯正治療の必要性や開始時期・方法は、お子さまの歯やあごの状態によって異なります。
※口腔機能発達不全症として保険で管理を受けられるのは、診断の基準に当てはまる場合に限られます。
参考文献
- 厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査結果の概要」(歯列・咬合の状況)
- Nogami Y, et al. Prevalence of an incompetent lip seal during growth periods throughout Japan: a large-scale, survey-based, cross-sectional study. Environ Health Prev Med. 2021;26:11.
- ライオン株式会社・弘前大学・青森県黒石市「『睡眠時の口呼吸』や『あまり噛まない』習慣が、歯並び悪化に関与する可能性を確認」(発表資料、2026年7月21日)
- 小児科と小児歯科の保健検討委員会「指しゃぶりについての考え方」(2006年)
- 日本歯科医学会「口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方」(2024年3月)
- American Association of Orthodontists(米国矯正歯科医会)「7歳までの矯正歯科チェック」に関する推奨
- 消費者庁「硬い豆やナッツ類は5歳以下の子どもには食べさせないで!」(子ども安全メール、2023年)
