あなたの歯を守っているのは「唾液」です|二宮町の歯科医師が解説
歯のケアというと、多くの方が歯みがきを思い浮かべます。もちろん大切です。
ただ、1日24時間のうち、歯みがきに使う時間はせいぜい10分程度ではないでしょうか。
では、残りの23時間50分、あなたの歯は何に守られているのでしょうか。
答えは唾液です。二宮町のはら歯科クリニックでは、虫歯を繰り返す方のご相談で、歯みがきの話より先に唾液の話をすることがよくあります。今回はその中身をお伝えします。
唾液は「ただの水」ではありません
唾液は1日に1〜1.5リットル程度分泌されるといわれます。その働きは、単に口を湿らせることではありません。
1. 洗い流す(自浄作用)
食べかすや細菌を、常に流し続けています。唾液が少ないと、口の中に物が留まる時間が長くなります。
2. 酸を中和する(緩衝能)
食事のたびに、口の中は細菌が作る酸によって酸性に傾きます。唾液にはこの酸を中和し、中性に戻す働きがあります。この戻す力が、虫歯予防の要です。
3. 溶けた歯を修復する(再石灰化)
唾液にはカルシウムやリン酸が含まれています。酸で少し溶けた歯の表面に、これらを戻して修復しています。歯は、毎日少しずつ溶けて、毎日少しずつ戻っています。
4. 細菌の増殖を抑える(抗菌作用)
唾液中の抗菌成分が、細菌が際限なく増えるのを抑えています。
虫歯は「溶ける量」と「戻る量」の収支です
脱灰と再石灰化のシーソー
歯が酸で溶けることを脱灰、唾液によって修復されることを再石灰化といいます。
口の中では、この2つが毎日繰り返されています。
- 再石灰化のほうが多ければ → 歯は維持される
- 脱灰のほうが多ければ → 少しずつ穴が開いていく
つまり、虫歯は「ある日突然できる」のではなく、収支のマイナスが積み重なった結果です。この見方に立つと、対策の考え方が変わります。
食事のたびに口の中は酸性になる
食べ物や飲み物が口に入ると、細菌がそれを材料に酸を作り、口の中は酸性に傾きます。歯が溶け始めるのは、おおよそ pH5.5 前後からとされています。
その後、唾液が働いて中性に戻るまでには、おおむね30分から1時間程度かかります。
「何を食べたか」より「何回食べたか」
ここが、この記事で最もお伝えしたい点です。
同じ量でも、回数で結果が変わる
たとえば、同じお菓子を食べるとしても——
- 3時に、まとめて食べる → 酸性になる時間は1回分
- 朝から夜まで、少しずつつまむ → そのたびに酸性になり、戻りきる前にまた下がる
後者の場合、口の中が中性に戻る時間がほとんどありません。唾液が修復する時間を与えられないまま、脱灰だけが積み重なります。
「甘いものを控える」より「食べる回数を決める」ほうが、実は効きます。
意外と見落とされるもの
食事以外にも、口の中を酸性に傾けるものがあります。
- 砂糖入りのコーヒー・紅茶を、少しずつ長時間かけて飲む
- スポーツドリンクや経口補水液を、こまめに口に含む
- 飴やのど飴を習慣的に舐める
- 就寝前のアルコール
いずれも「食事」という意識がないまま、口の中に糖や酸が入り続ける状態を作ります。とくに飴は、口に留まる時間が長いため影響が大きくなります。
夜、唾液は止まります
睡眠中は分泌が大きく減る
唾液の分泌量は一定ではありません。日中は多く、睡眠中は大きく減少します。
つまり就寝中は、
- 洗い流す力が働かない
- 酸を中和する力が働かない
- 修復する力も弱まる
という、歯にとって最も無防備な時間帯になります。細菌にとっては、数時間にわたって邪魔をされない時間です。
だから寝る前の1回が決定的
前回の記事でも触れましたが、1日のうち1回だけ丁寧にやるとすれば、それは寝る前です。
唾液という防御が働かない時間に入る前に、細菌の量をできるだけ減らしておく。これが理屈として最も合理的な順番です。
逆に、寝る直前の飲食は最も避けたい習慣です。糖や酸が口に残ったまま、唾液が止まる時間に入ることになります。
唾液が減っている方は、少なくありません
ご自身では気づきにくいのですが、以下に当てはまる方は唾液が減っている可能性があります。
よくある原因
服用中のお薬
唾液の減少は、薬の副作用として比較的多くみられます。降圧薬、抗アレルギー薬、睡眠薬、抗うつ薬、頻尿の薬など、日常的に処方される薬が該当することがあります。
ご自身で判断して薬を中止することは絶対に避けてください。お薬手帳をご持参いただければ、口の中の状態と併せて確認します。必要に応じて、処方元の医科と相談させていただきます。
口呼吸
鼻炎や花粉症などで鼻がつまっていると、口で呼吸をするようになります。口が開いた状態が続くと、唾液は蒸発して乾きます。就寝中のいびきがある方も同様です。
加齢
年齢とともに唾液腺の機能は変化します。またお薬の種類が増える年代とも重なります。
ストレス・緊張
緊張すると口が渇くのは、自律神経の働きによるものです。慢性的な緊張状態が続くと、日常的に乾きやすくなります。
水分不足
単純に水分摂取量が足りていない場合もあります。
こんなサインはありませんか
- 朝起きたとき、口の中がカラカラしている
- 乾いたパンやビスケットが食べにくい
- 水がないと食事が進まない
- 舌がヒリヒリする、味を感じにくい
- 話していると口が渇いて言葉が出にくい
- 入れ歯が外れやすくなった
唾液を減らさないための習慣
特別なことは必要ありません。続けられることだけを選んでください。
1. よく噛む
唾液は、噛むことで分泌が促されます。やわらかいものばかりでは、その刺激が減ります。食材を大きめに切る、汁物で流し込まないといった工夫だけでも変わります。
2. 水を、こまめに
一度に大量ではなく、少量ずつ。常温か、ぬるめが適しています。糖分を含む飲料で水分補給を兼ねるのは避けてください。
3. 鼻で呼吸する
日中、口が開いていないか意識してみてください。鼻炎で鼻がつまっている方は、耳鼻科での治療が口の乾燥の改善につながることがあります。
4. 唾液腺マッサージ
耳の下(耳下腺)、顎の下(顎下腺)、顎の先の内側(舌下腺)を、指の腹で優しく押します。食事の前に30秒程度で構いません。
5. 無糖のガムを噛む
噛む刺激で唾液分泌が促されます。キシリトール配合のものを選ぶとより適しています。ただし顎に負担を感じる方は控えてください。
6. 間食の「回数」を決める
量を我慢するより、時間を決めるほうが続きます。「食べるなら1回にまとめる」だけで、口の中の環境は変わります。
7. 寝る前の飲食をやめる
これが最も効果が大きく、最も始めやすい習慣です。寝る1〜2時間前からは水以外を口にしないと決めてみてください。
二宮町・はら歯科クリニックでの取り組み
当院では、虫歯を繰り返される方に対して、削って詰めるだけで終わらせず、なぜ繰り返しているのかを一緒に探します。
- 食事・間食の回数とタイミング
- 服用中のお薬
- 口の乾燥の程度
- 磨き残しが出ている場所
同じ「虫歯」でも、原因が違えば対策は変わります。歯みがきをがんばっているのに結果が出ない方ほど、別の要因が隠れていることが多いというのが実感です。
お薬を服用中の方は、お薬手帳をご持参ください。二宮町・大磯町・平塚市からもご来院いただいています。
まとめ
- 1日の大半、歯を守っているのは歯みがきではなく唾液
- 唾液には、洗い流す・酸を中和する・修復する・菌を抑える働きがある
- 虫歯は「溶ける量」と「戻る量」の収支で決まる
- だから「何を食べたか」より「何回食べたか」が効く
- 睡眠中は唾液が大きく減り、歯が最も無防備になる
- 寝る前の1回の歯みがきと、寝る前の飲食を断つことが最優先
- 唾液の減少は、服用中のお薬が原因のこともある
今日から変えるなら、ひとつだけで構いません。「寝る前に食べない」——これが一番割のいい習慣です。
はら歯科クリニック(神奈川県中郡二宮町・二宮駅から徒歩2分)
予防歯科・義歯治療・ホワイトニング
診療時間:火〜金 9:00〜13:00/14:00〜17:00(最終受付16:30)、土 9:00〜15:00(最終受付14:30)
休診日:日・月・祝
ご注意(禁忌・留意事項)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
※唾液の分泌量、再石灰化の程度には個人差があります。すべての初期虫歯が再石灰化で改善するわけではありません。
※服用中のお薬を、ご自身の判断で中止・変更しないでください。気になる場合は必ず処方元の医師・薬剤師にご相談ください。
※口腔乾燥には、シェーグレン症候群や糖尿病など全身疾患が関与している場合があります。症状が強い場合は医科の受診をご検討ください。
※唾液腺マッサージは、顎や頬に痛み・腫れがある場合、また唾液腺の炎症が疑われる場合には行わないでください。
※ガムの咀嚼は、顎関節症の症状がある方には適さない場合があります。
※キシリトールは、一度に多量に摂取すると軟便・下痢を起こすことがあります。
参考文献
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「唾液の働き」「歯の再石灰化」
- 日本口腔衛生学会「フッ化物応用に関する見解」
- 日本歯科保存学会「う蝕治療ガイドライン」
- 日本老年歯科医学会「口腔乾燥症に関する資料」
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