歯周病は「歯ぐきの病気」ではなく「骨の病気」です|失った骨は戻らない、だから止める|二宮町の歯科医師が解説
「歯ぐきの腫れが引いたから、もう治ったと思った」
「痛くないので、通うのをやめてしまった」
「治療したら、かえって歯ぐきが下がって歯が長くなった」
歯周病について、二宮町のはら歯科クリニックでよく伺うお話です。
どれも、歯周病を「歯ぐきの病気」だと考えていると、自然に出てくる感想です。腫れや出血が治まれば治った、痛くなければ大丈夫、歯ぐきが下がったら悪くなった——。
ところが歯周病で本当に失われていくのは、歯ぐきではなく、歯を支えている「骨」です。この見方に立つと、治療の意味も、通い続ける理由も、まったく違って見えてきます。
歯を支えているのは「骨」です
歯は、骨に植わっている
歯は、歯ぐきに刺さっているわけではありません。あごの骨(歯槽骨・しそうこつ)に根を下ろして立っています。歯ぐきは、その骨の上をおおっているカバーのようなものです。
庭に立てた杭(くい)にたとえると、
- 杭 = 歯
- 地面 = 骨
- 地面をおおう芝生 = 歯ぐき
という関係です。杭がしっかり立っていられるのは、芝生ではなく、地面のおかげです。
歯周病は、地面が崩れていく病気
歯と歯ぐきの境目にたまった細菌が炎症を起こすと、体はそれを防ごうとします。その防御反応が長く続くうちに、歯を支える骨が少しずつ溶けて(吸収されて)減っていきます。
歯ぐきの腫れや出血は、いわば入口のサインです。歯周病の本体は、その奥で静かに進む骨の減少にあります。
公益財団法人8020推進財団の調査(2018年)では、永久歯を抜く原因の第1位は歯周病(37.1%)でした。歯が抜けるのは、歯そのものが悪くなるからではなく、支える骨がなくなるからです。
減った骨は、基本的に戻りません
歯ぐきは治る。骨は戻らない
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
- 歯ぐきの炎症は、原因の細菌を取り除けば、落ち着いていきます
- 失われた骨は、基本的に自然には元に戻りません
炎症が歯ぐきにとどまっている「歯肉炎」の段階なら、正しい清掃で健康な状態に戻ることができます(→歯ぐきの出血は「磨きすぎ」ではありません)。けれども、いったん骨が減り始めると、その骨は戻ってこないというのが原則です。
専門的な治療で骨の一部の回復を図る方法もありますが、行える条件は限られています。
だから、治療の目的は「止めること」
骨が戻らないのであれば、歯周病の治療とメンテナンスの目的は、
「元に戻すこと」ではなく、「これ以上減らさないこと」
になります。いま残っている骨を、できるだけ長く守る。それが、歯を長く残すことに直結します。
| 段階 | 骨の状態(目安) | 自覚症状 | 元に戻るか |
|---|---|---|---|
| 歯肉炎 | 炎症は歯ぐきだけ。骨はまだ減っていない | 磨くと出血、歯ぐきの腫れ | 正しい清掃で元に戻る |
| 軽度の歯周炎 | 骨が少し減り始めている | ほとんどない | 進行は止められる。減った骨は戻りにくい |
| 中等度の歯周炎 | 骨が根の長さの3分の1〜半分ほど減っている | 歯ぐきが下がる、口臭、噛むと違和感 | 進行を止めることが目的になる |
| 重度の歯周炎 | 骨が大きく減っている | ぐらつく、噛めない、膿が出る | 歯を残せないこともある |
表の「自覚症状」の欄を見てください。骨が減り始めても、痛みはほとんどありません。骨が溶けること自体は、痛みを伴わないからです。
「治った」と感じる瞬間の落とし穴
腫れや出血が止まった = 骨が戻った、ではない
治療やクリーニングで歯石や細菌が減ると、歯ぐきの腫れや出血は落ち着いてきます。これは炎症が治まったということで、とても大切な変化です。
ただし、それまでに減った骨は、減ったままです。ここで「治った」と考えて通院をやめると、細菌がまた増え、残っている骨が再び減り始めます。
治療後に歯ぐきが下がって見えるのは、悪化ではない
「治療したら、歯ぐきが下がって歯が長くなった」というご相談は少なくありません。
これは多くの場合、悪くなったのではなく、炎症で腫れていた歯ぐきが引き締まり、減っていた骨の高さに落ち着いたということです。腫れている間は、歯ぐきが骨の減少を覆い隠していたのです。
歯ぐきが下がって根元が出ると、冷たいものがしみることがあります(→知覚過敏の原因と治し方)。気になる場合はご相談ください。
痛くない = 進んでいない、ではない
骨は、痛みを出さずに減っていきます。「痛くないから大丈夫」は、歯周病にはあてはまりません。
骨が減っているサイン
次のような変化は、骨が減ってきているサインのことがあります。
- 歯が長く見えてきた
- 歯と歯の間にすき間や、黒い三角ができてきた
- 食べ物が歯の間に挟まりやすくなった
- 前歯が少しずつ前に出てきた、すき間が広がってきた
- 噛んだときに、歯が浮いたような感じがする
- 口臭を指摘されるようになった
- 歯がぐらつく
いくつか当てはまる場合は、一度歯ぐきの検査を受けることをおすすめします。
自分の骨を「知る」習慣
歯ぐきの検査の「数字」を聞いてみる
歯科医院の歯ぐきの検査では、歯と歯ぐきの間のすき間(歯周ポケット)の深さを測ります。
- 3mm以内:健康な目安
- 4mm以上:歯周病が進んでいるサイン
ポケットが深いところほど、その奥で骨が減っている可能性があります。検診のときに「深いところはどこですか」と聞いてみてください。数字で知ると、どこを丁寧に磨けばいいかがはっきりします。
レントゲンで、骨の高さを見せてもらう
骨は、目で見ることはできませんが、レントゲンに写ります。歯の根のまわりの骨がどの高さまであるかは、レントゲンで確認できます。
前回のレントゲンと比べて骨の高さが保たれているか。これが、メンテナンスがうまくいっているかどうかの、いちばん確かな答えです。
骨を守る、毎日の習慣
- 歯と歯の間を清掃する:フロスや歯間ブラシで、歯ブラシが届かない場所の細菌を減らす
- 出血をサインとして見る:出血は、炎症が起きている場所を毎日教えてくれます
- たばこを控える:喫煙は歯周病の大きな危険因子です。しかも血流が減って出血しにくくなるため、進行に気づきにくくなります
- 糖尿病を管理する:糖尿病と歯周病は互いに悪化させ合う関係にあります(→歯周病と糖尿病の深い関係)
- 定期的にクリーニングを受ける:固まった歯石は、ご自身では取れません
二宮町・はら歯科クリニックでの取り組み
当院では、定期検診とクリーニングを保険診療で行っています。歯科衛生士が常駐しており、歯ぐきの検査やレントゲンで状態を確認しながら、歯石の除去や、磨き残しの癖に合わせた磨き方のアドバイスを行います。
検査の数字やレントゲンは、前回と比べてどう変わったかをお伝えするようにしています。減った骨は戻せなくても、残っている骨を守れているかどうかは、確かめることができるからです。
定期検診を兼ねたクリーニングの窓口負担は、3割負担の方で3,000円程度が目安です(お口の状態や検査内容によって変わります)。
「しばらく通っていない」「治ったと思ってやめてしまった」という方も、気にせずお越しください。二宮町・大磯町・平塚市からもご来院いただいています。
まとめ
- 歯周病で失われていくのは、歯ぐきではなく歯を支える骨
- 歯ぐきの炎症は治るが、減った骨は基本的に戻らない
- だから治療とメンテナンスの目的は、これ以上減らさないこと
- 腫れや出血が止まっても、骨が戻ったわけではない
- 治療後に歯ぐきが下がって見えるのは、多くの場合悪化ではなく、炎症が治まったしるし
- 骨は痛みを出さずに減っていく
- 検査の数字とレントゲンで、自分の骨の状態を知ることができる
歯を守るとは、骨を守ること。今ある骨を、これ以上減らさないために通い続けてください。
関連ページ
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- 予防・定期検診 — 当院の定期検診とクリーニング
はら歯科クリニック(神奈川県中郡二宮町・二宮駅から徒歩2分)
予防歯科・義歯治療・ホワイトニング
診療時間:火〜金 9:00〜13:00/14:00〜17:00(最終受付16:30)、土 9:00〜14:00(最終受付13:30)
休診日:日・月・祝
ご注意(禁忌・留意事項)
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の診断・治療を推奨するものではありません。
※歯周病の進み方や、治療・メンテナンスの効果には個人差があります。
※表の「骨の状態」は進行の目安です。実際の状態は、検査とレントゲンで確認します。
※失われた骨の一部の回復を図る専門的な治療は、骨の減り方や部位などの条件によって行えない場合があります。
※治療後に歯ぐきが下がって見える程度は、もともとの骨の減り方によって異なります。
※糖尿病など全身の病気がある方、喫煙される方は、歯周病が進みやすく、治療への反応も異なることがあります。受診時にお知らせください。
※窓口負担の金額は目安です。検査内容・お口の状態・負担割合によって変わります。
※歯を残せるかどうかの判断は、診察のうえで行います。
参考文献
- 日本歯周病学会「歯周治療ガイドライン2022」
- 公益財団法人8020推進財団「第2回 永久歯の抜歯原因調査報告書」(2018年)
- 厚生労働省「令和4年 歯科疾患実態調査」
- 日本歯周病学会「歯周病と全身の健康」
